花とみらい

あなたの輝く笑顔が、ずっとずっと続きますように。

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鬼夕の月(5)

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信じてる・・・  その言葉は凍てついて
この絆は壊れてしまったけれど
この胸の傷みだけは、抱えて朽ちたいから・・・


鬼夕の月(5)   凍てついた絆



玄関のホールに着くと、2人は息を呑んだ。
目の前には一人の美女と、死体となって倒れた市長の姿がある。
ホールは血だらけで、市長の付き添いに来ていたガードマンの
死体は見るも無残に引き裂かれ、よもや性別の判断も難しい。

篝は横目に夕夜の様子を窺う。
夕夜は先ほどよりもさらに蒼白な表情で目の前の美女を見つめていた。
美女はにっこりとした優しげな微笑で夕夜を見つめ、口を開いた。
「久しぶりね、夕夜。」
夕夜は信じられないモノでも見るかのような目で、目の前の
美女を睨んだままだ。しかしそれも、長くは続かなかった。
「母さん・・・なぜ・・・貴方は、死んだのだと・・・」
夕夜は次第に声がかすれ、体中を震わしていた。
そんな夕夜を見て楽しむように、母親と呼ばれる美女は笑った。
「私は死んでなんかいないわよ、夕夜。貴方の目の前に居るのは紛れもなく貴方の母親でしょう?残念ながら、お父さんは死んでしまったけれど。」
女はそう言って笑いながら、市長の亡骸をモノともせずに夕夜へと近寄る。
夕夜は半歩後退し、全てを否定するかのように左右に首を振った。
「・・・・・・なんで・・・・かあさ・・・そん・・・な・・・。」
「夕夜・・・如何して逃げるの?久しぶりに会えたのに。」
女は天使のような微笑を浮かべたまま2人に近づく。
夕夜はそれでも後ろに後退し続ける。
篝は夕夜を守るように目の前に立ちはだかった。

「・・・・来るな。これ以上、夕夜に近づけさせない。」
篝はキツイ眼差しでその女を見つめ、警戒した。
その様子に、女は堪えるような笑みをする。
「くっ・・・はははははは!傑作ね!此処まで指示通りに動いてくれるとは思わなかったわ・・・!」
「何が、可笑しい。」
篝は何時もよりも数倍に冷えた声で女に向け言い放った。
女はそれでも笑うことを止めず、侮蔑の笑みで篝を見た。


「ねぇ?夕夜。教えてあげましょうか、その、篝と呼ばれる者の正体を。」
「・・・・・・っ!?」


―夕夜が言葉を発しようとしたその一瞬、鋭い衝撃が夕夜の体を貫いた。
「・・・・・な・・・・ん・・・・・。」
目の前には、長年信じ続けていた少年が、抱きとめるような形で見下ろしている。
「な・・・んで・・・。」
自らの体内に、恐ろしいほど鋭利な鉄の塊が貫通しているのがわかった夕夜は、まるで絶望を見るような目で篝を見た。
「・・・・・・・・・。」
篝は虚ろな瞳で、夕夜を見つめたままだった。
「もう、わかったでしょう?エイレンを滅ぼしたのは篝よ。」
「・・・・・・そ、んな・・・どう・・・て。」
「伝説の最終兵器・・・わかるでしょう?彼がソレなのよ。」
夕夜は驚愕の事実に目を見開く。
「そ、んな・・・か、がり・・・が・・・あの兵、器だ・・・なんて。」

夕夜の頬に涙が流れる。
全ては偽りだったのだ。あの時の出会いも、この長年の時間も。
家族でさえも。父さん・・・父さんはこの事実を知っていたのだろうか?
いや、知らなかったに違いない。殺されるまで真実を知らなかったのだ。

夕夜は篝を見つめる。薄れゆく意識に、必死に縋りつきながら
それでも夕夜は篝を恨まなかった。

篝・・・虚ろな瞳。あの時のような、虚ろな。
ずっと、ずっと・・・今の今まで、支配されてたのか・・・
命令されて、従わされていた・・・記憶を消されて・・・。
気づいてやれなかった・・・・あんなに一緒だったのに。
篝、ごめんな・・・・・。

「ふふ・・・そろそろお休みのお時間のようね、夕夜。でも安心して・・・まだ貴方に死んでもらうつもりはないから。」

篝の腕から崩れ落ち、倒れ込んだ夕夜に顔を近づけ、囁く―
「貴方の記憶を塗り替えてあげる。まだ貴方にはやることが沢山あるのよ、夕夜。」
夕夜は美女の頬に唾を吐くと、憎しみの炎を宿した瞳を自らの母に向けた。
「・・・・・・許さない。貴方だけは・・・・絶対に・・・っ!!」
「そう・・・。」
美女はギラギラとした残酷な笑みをして、頬の唾を拭うと
先ほど篝に貫かれた傷を踏みつける。
「・・・ぐぁっ!?」
夕夜は急な痛みに驚き、苦痛の喘ぎを漏らす。
「可哀想にね・・・。貴方はこれから、篝に仕組まれたと思わされて、篝を殺す為に・・・それだけに生きていくのよ。」
「・・・・・・なっ!?」
夕夜は驚きと怒りで拳に力が入った。
「さぁ、そろそろ眠りなさい。」

夕夜の目の前に、おぞましい手が触れてくる・・・その時だった。
夕夜は痛みを堪え、体を離すように体を反転させた。
篝の足元に倒れ込むと、激しい痛みに息は荒れ、意識が薄れる。
それでも夕夜は精一杯の微笑を篝に向けた。
「篝・・・もう俺はダメかもしれない。だから、コレだけを信じて・・・欲しい・・・。」
薄れ行く意識の中で、夕夜は最後の言葉を篝に告げた―


―俺は篝が大好きだよ。いつも、いつまでも。








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