花とみらい

あなたの輝く笑顔が、ずっとずっと続きますように。

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鬼夕の月(4)

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鬼夕の月(4)   失われた時間2 

周りには瓦礫と血臭・・・それしかない。
跡形もなく崩れ去った町の一箇所に、夕夜は篝を手招きした。
其処は都市の中心地から少し離れた大きな館だった。
しかし館は古く、本々使われていない館のようだった。

「此処を拠点にしよう。」
夕夜は茂みに隠れたこの家を見つめてそう呟いた。
「・・・・拠点?」
篝は不思議そうな瞳をしてそう呟いた。
しかし夕夜はその質問には答えず、足早に建物の敷地へと足を踏み入れる。
篝は黙ったまま、夕夜の後ろを小走りで付いていく。
古い館の玄関前まで行くと、夕夜は立ち止まった。
「・・・・・・・掃除が大変そうだ。」
「此処に・・・住むの?もしかして。」
「あぁ。」
篝は目の前の古い館を見つめたまま呟く。
「・・・食料とか水はどうするの?」
「食料は暫くは自給自足だね。隣町まで買いに行ってもいいし・・・。」
「・・・・・水は?」
「多分、まだ水源はあるはず。この館が使われなくなったのは、まだ六年前だからね。」
「ふぅん。」
「それじゃあ、入ろうか。」
夕夜は篝に笑顔で促すと、玄関の錠を壊して館内に入った。
外から見るよりも、中はそれほどまでに古くなっていなかったため、掃除をすれば住むことはできるようで、夕夜は安堵の笑みを零していた。
「よかった。予想以上に奇麗だね・・・。」
夕夜はそれだけ言うと、さらに口を開いた。
「篝。あのね・・・」
「・・・・うん?」
「手伝ってほしいんだよ。君にも・・・都市をまた作り上げる協力をね。」
「・・・・都市を作り上げる?」
「そう。」
夕夜は憂いを秘めた表情で館を眺め、そして俯いた。
「多分、なんらかの理由でこの都市は潰されたんだろうからね。」
「・・・・・・・・。」
「許せないんだ。私利私欲の為に、こんな風に簡単に人の命を奪う事ができるって言うのが。ついさっきまで喜んだり悲しんだりしていた人たちが、何の表情もしなくなる。言葉もなくしてしまう。」

夕夜は拳を握り締め、震えていた。
「相手側の思い通りになんてさせたくない。そして、この都市をまた以前のような活気ある都市にしたい。大切な者を奪われぬような都市に。」
・・・それは夢のような話だった。
人は自らの欲の為に行動し、判断する生き物だ。そして、この惨劇に憂い嘆く人は何人いるんだろう。全て隣街の惨劇として処理されるだけではないだろうか。いいように噂は広がり、その殆どは話題のネタとでしか見てもらえない。実際に人が死んでいても、彼らにはどうでも良い話で終わってしまう。
「バカなことだと思う?」
夕夜は振り返ってそう言った。
「わかんない。」
玄関の前で、篝は突っ立ったままだった。
夕夜はゆっくりと篝に視線を合わせたまま近寄った。
「そう言えば、篝は如何してあの場所に居たの?」
「記憶が曖昧でよくわからない。でも此処に来なければいけなかったんだ。」
「・・・・来なければいけなかった?」
「・・・・そう。何でだか知らないけど、そう思うんだよ。」
篝は寂しそうにそう呟いた。
そこで夕夜は初めて、篝が不安な表情をしている事に気づいた。

「大丈夫だよ。いずれ全て思い出せるさ。」
「・・・そうだよね。」
篝は俯いていた顔を上げ、満面の笑みでそう答えた。



*--◇--*--◇--*--◇--*--◇--*--◇--*--◇--*--◇--*--◇--*--◇--*


エイレンの都市崩壊からの数年は、自らが生きるために精一杯だった。
食料は隣町まで行かねばないし、一般的な生活に馴染むのに時間がかかった。
しかし、馴染んだあとの10年間は都市の復旧活動に励み続けていた。
次第に惨状となった都市とは思えないほどまで、都市の復旧は成功していた。
あの日までは・・・。

そう、あの日・・・
隣街のトゥレイナから市長がやってきた。
何を言いにきたのか、夕夜も俺も知っていた。
都市崩壊後、この土地は隣街のトゥレイナの所有地となっていたからだ。

「勝手な事をされては、困るんだがね。」
金と赤のチェックのネクタイを愛し気に触りながら、もう片方の手には葉巻があり、煙を撒き散らしている。夕夜は穏やかな表情で、その男の目の前に立つ。
「しかし、ゴートン市長。僕はどうしても元の都市に戻したいのです。」
「しかしな、君。此処はもう首都からの決定で、私の土地となったのだよ?」
「失礼ですが、ゴートン市長。数年前までは、この土地があまりにも荒れていたために、所有権を放棄しようと考えていたそうですね。それが、このように再度復旧が整ったからと言って、やはり放棄はしない。私のものだ。とは虫が良すぎませんか?」
「君は、誰にそんな口を聞いているんだね?」
「紛れもなく、隣街の市長さまに。」

夕夜はにっこりと微笑みながら、目の前の市長を牽制する。
「ゴートン市長。貴方は私達の活動を今まで止めようとすらしなかった。それはなぜですか?なぜもっと前に来なかったのですか?それは、貴方にとって都合がよかったからでしょう?」
「・・・・・・・。」
「この街を再度、元の都市へと復旧させるためにはお金が掛かりすぎたからでしょう?」
夕夜は目の前に居る、仮にも隣の街の市長に一歩も食い下がらなかった。
それどころか、食って掛かっている。

「そこで、お話があるんですよ。」
「・・・・・・話だと?」
「そうです。この地のことでです。この地が例え復旧したとしても、管理をするのは物凄く大変ではないですか?」
「・・・・・・・。」
「この地を僕に任せていただければ、五年後には半分まで人が住む都市にします。利益もそれなりにしましょう。そしてその利益の半分を、そちらの都市に差し上げる形を作ります。」
ゴートン市長はギラリと目を見開いた。まるで信じられないモノを見たかのように。
「そんな事が、可能なのか?・・・・・」
「可能です。ただし、5年~6年は放っておいて下さい。それが条件です。」
「・・・・・・う~む。」
ゴートン市長は、何度も夕夜を見ては俯き、考え深げに唸った。
そして・・・

「怖い男だな、君は。」
それだけを言い、立ち上がった。
「いいだろう。5年・・・いや、6年待ってやる。でも、もし其れまでに君が言った通りにならなかった場合は・・・・その時は、この街は砂漠地帯に早変わりするだろう。それでいいな?」
「わかりました。」
「・・・・・・・そうか。それじゃあ私はこれで帰るとしよう。」
市長は優雅な足取りで、玄関へ向かって行った。


「夕夜・・・よかったな。」
「あぁ、これで暫く活動でき―」

夕夜がそう言いかけた時だった。
『ぐがぁぁぁぁぁああぁあ!!』
市長の悲鳴が、二階のこの部屋まで聞こえてきた。
「な・・・!?今の声は・・・市長!!?」
夕夜は蒼白な表情で玄関へと走り出す。
「篝!行くぞ!」
その声と同時に、2人は走り出していた。















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